masato-ka's diary

日々思ったこととか、やったことの備忘録。

世はまさに大フィジカルAI時代 〜フィジカルAIアドベントカレンダーイントロダクション〜

この記事はフィジカルAIアドベントカレンダー1日目の記事です。

大フィジカルAI時代

2025年はフィジカルAIというキーワードが興隆した。AIにより制御されたロボットの動画が毎日のようにSNSに登場し、新しい技術の登場に誰もが目を見張っている。これらの技術は一部の専門家だけが試せるのではなく、誰もが再現することができるようになった。専門家や一部の天才身を削ってやっと実現できていたことが、誰もが真似をできる再現性の高い技術になった。これは産業を大きく広げるターニングポイントの入り口に立っているように感じる。時はまさに大フィジカルAI時代なのだ。

物理世界を行動する知能の本質に迫る

フィジカルAIという単語は多くの場合、AIを用いてロボットの動作を制御する技術の総称として扱われている。特に人間による操作のお手本をAIで学習しロボットアームの関節を直接制御する模倣学習による制御、さらに言語情報を加味して言葉の指示お通りに動くロボット、強化学習による2足、4足のロボットの不整地の歩行やアクロバティックな動作の制御などが代表例だ。

これらの技術は既存のAIやロボットの研究成果や技術の上に成り立っているものだが、単純な組み合わせではなく、物理世界で動作する知能ならではの難しさをハードウェア、AI、データの3極から追求している。知能の本質を追求するテーマとなっている。

量産されるヒューマノイド

フィジカルAIという言葉が浸透し、期待を向けられ始めた要因の一つとしてヒューマノイドがある。中国や米国のスタートアップから安価なヒューマノイドロボットが登場した。一部は工場などでの軽作業などを行う動画が毎週のようにSNS上で拡散され続けた。また数十万円から数百万程度のこれまででは考えられなくらい安価なヒューマノイドロボットが登場した。

www.unitree.com

未だこのヒューマノイドを何に使うのか出口は見えておらず産業として成熟するか不透明だ。しかし間違いなくこの分野の期待感を増長させる象徴となっている。

AI技術の進化

これらヒューマノイドはこれまで開発されていたヒューマノイドと一線を画している。その制御は緻密に計算された制御ではなく、「AI」を利用して大量のデータを元に制御されるものだ。歩行動作ではシミュレーション上での大量の試行錯誤をもとに強化学習を施し、現実のロボットへ適用させている。これまでロボットの歩行研究で難関とされていた様々な課題を最も簡単にクリアしているように見える。マニピュレーションでは長時間のタスク実行や未知環境のタスク実行が大量データへの学習でできるようになった。

www.physicalintelligence.company

beyondmimic.github.io

とても楽観的に見てしまうと、大量のデータさえ集めてしまえばなんでもできるヒューマノイドがいとも容易く実現できるように感じてしまう。もちろんそんなことはないのだが、そう感じさせてしまうくらいにこの技術進化は急速に進んでいる。

誰もがフィジカルAIを試せる。

そして最もこれまでと違うのは、これら最新の研究成果を個人でも試せるところまできた。ロボットやAIの専門家でなくても試すことができる。この点がこれまでのロボットブームと大きく違うところだ。特にHuggingFaceが開発を進めているフィジカルAIのライブラリLeRobotはAIによるロボット制御の民主化に大きく貢献している。筆者もLeRobotを自ら使うことはもちろん、半年の間に数多くのハンズオンを行い、ロボティクスの専門家から全くの未経験者まで、多くの人が模倣学習やVLA(Vision Language Action)を試すのをみてきた。

これまでのロボティクスの研究は最新技術を試すためにロボティクスの専門知識を必要とする領域だった。ロボットに対する素養のある人が試すことが限度であった。しかしフィジカルAIはこの人の集まり方が変わってきている。ここはフィジカルAIへの期待の一つである。

これまで限定され閉じられていたある種の村社会から大きく開かれ、これまでよりも多くの知見がこの分野に落とされていくことに期待している。

LeRobotを使ってフィジカルAIを始めてみたいという人はまずは以下のGitHubリポジトリや書籍をおすすめしたい。

huggingface.co

techbookfest.org

来年に向けて

このアドベントカレンダーではさまざまなバックグラウンドの方達が参加してくれることを期待している。これまでロボットを生業にしていた方、研究者、ホビースト、専門外の方など、多くの方達の意見や知見が共有されることを願う。そしてこの読者にとってはフィジカルAIの情報に触れて是非このムーブメントに考えを巡らせて欲しい。このアドベントカレンダーが皆さんの来年の何かしらのアクションに繋がることを期待している。